ねぶそく裏表紙

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The Norwood Suite

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The Norwood Suite

かつては巨匠ピアニストの邸宅であり、音楽の跡を遺しつつも今はホテルとなった「Norwood Suite」を舞台にしたアドベンチャーゲーム。

デベロッパーCosmo Dの前作『Off-Peak』と比べると、精神的かつ直系の続編とされた今作はよりゲーム性を強く帯びたように感じます。前作におけるコラージュめいた造りの舞台とゲーム内容に惑わされた経験から一転、宿泊客たちのお使いというわかりやすい要素を組み込んだ今作は、導線が随分はっきりと目に映るようです。前作はずっと地に足がつかない感覚でした。そこが魅力でもあったわけですが。

本作に触れる大半の時間は、ある人物に扮する「仮装」のための衣装や装飾品集めに奔走することになります。

色々な事情の末にこのホテルに落ち着いた宿泊客たちは、自身のビジネスや芸術活動において何らかのつまずきに合っています。冒頭で言い渡される「ここでは誰しもが何かを探し求めている」という警句に違わず、宿泊客たちは物体/非物体に関わらず、状況を改善し得る何かを欲しており、探し物を渡してあげると感謝の言葉と共に仮装の材料が手に入る。

部屋から部屋へ、時には仕掛け扉の裏に潜む隠し通路を経由して、広いホテルをぐるぐると歩き回るうちに、『私』は徐々に別の人物へと成り変わっていきます(厳密に言うとその都度着替えていくわけではありませんが)。

どこまでも付きまとう音楽に耽り、限られた空間で同じ場所を何度も巡る行為がある種の催眠術のようです。するとどうでしょう、身形の変化もあいまって、次第にこの作品に、この「Norwood Suite」というホテルに溶け込んでいくような錯覚を覚えたのですが、これは開発者が意図した造りなのか、それとも私の何かが引き込まれただけなのか。

現時点2017年ベスト。

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