ねぶそく裏表紙

楽しんだものを書いています

Off-Peak

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Steam:Off-Peak

 一人称視点のアドベンチャーゲーム。

「私」の目の前に乗車扉の閉まった電車が佇んでいる。どうやら電車から降り立った場面のようです。後ろを振り向くと、巨大な時計を掲げた建築物がそびえており、とりあえず、あの建物に向かおうかしらと歩み始めたのも束の間、ベンチに腰掛けた怪しげな男に呼び止められます。

「ロウェイトンに向かうのか?」

私はロウェイトンに向かう途中だったのか。ロウェイトン…アメリカはコネカチット州にある駅名と出てきました。会話は続き、決して安くはないロウェイトン行きの乗車チケットを無償で譲ってくれると言います。しかし、チケットは幾つかの破片に千切れ、前方に見える駅の構内に散らばっているとのこと。

チケットの破片を拾い集めるため駅に足を踏み入れた瞬間、視界に飛び込んでくるのは広々とした構内と、そこに所狭しと配置されたポスターや彫刻、グラフィティといったアート群。

恐らくグランド・セントラル駅をモデルにしたこの場所を、アート作品に見守られながら、破片を求め右往左往することになります。

駅ですから、いろいろな事情や目的地を抱えた人たちが集まっています。近づく私には目もくれず仲間内で話に花を咲かせる人、目線は合わせてくれますが内容が抽象的で私というより自問自答のような話しぶりの人、「巨人」がピアノを演奏するのを拒みどうしようかと頭を抱える人。前後の脈絡が不分明な所に放り込まれ、途方に暮れてしまいます。巨人?

構内の非日常な景色に囲まれて、ずっと浮足立つ思いで歩き回ることになります。しかし、店頭の商品を盗み食いして怒られるといった俗な出来事も起こり、捉えがたい会話の中に複数の人から発せられる共通の話題(この駅を支配するマーカスなる人物、サーカスと呼ばれる団体など)を聞くと、どうもこの世界は思ったほど支離滅裂というわけでもなく、最低限の秩序はありそうだとほっと一息、よし作品に潜むものを読み取ろうと襟を正したのも束の間、ホワイトアウトしてキノコに囲まれた場所で目を覚ます。夢心地がどこまでも付き纏って離れません。

ゲームも含め、エンタメ作品に対して「ここではない場所へ連れて行ってくれる」といったニュアンスの評をよく見かけます。現実を忘れさせてくれるような、今まで味わったことのない感覚を与えてくれる体験を指しているかと思われますが、私にとって本作は、プレイ当初はこの分類に属しながらも、次第に「何処へ連れて行かれるんだ」という怖さが帯び始めていきました。

チケットの破片を集め、余韻といううっとりする言葉とは少し違う、一種の後味の悪さを残し駅を発つまで1時間弱の体験。ビジュアルと音楽(サイケデリックなエレクトロニカ?所々ジャズ。)と語りが奇天烈に溶け込んだこの駅は、「私」と同じく無料で訪れることができるので、是非。

cosmoddd.itch.io

精神的続編「The Norwood Suite」が来月に発売されるようです。舞台はホテルとのこと。これまた色々な事情を抱えた不特定多数の人が集まる場所で、楽しいことが起こりそうですね。