ねぶそく裏表紙

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Don't open the doors!

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Steam:Don't open the doors! 

エンドロールまで見届けるものもあれば、私の中の何かにひっかかりを覚えたがために終わらない小休止を挟む作品もあります。結構あります。しかし、ごく稀に、そんな違和感を麻痺させる力を持つ作品がやってくる。本作品のような。

Anton Riotによる「Don't open the door!」は、製作者自身の手で形作られた工作用粘土によって物語られるハンドメイドアクションアドベンチャー。周囲を取り囲む自然、地を這う虫、その虫を潰すと飛び散る体液に至るまで、色とりどりの粘土で組み上げられた世界を歩みます。

ストーリー。ある日、世界に「扉」が現れました。増殖し続ける扉に地上が埋め尽くされる前に、大元の扉を吹き飛ばす「Megabomb」を作動させるため奔走する、といった内容です。突拍子もない幕開けに続けとばかりに、平和に至る道筋には突拍子も常識も持ち合わせていない粘土たちが待ち構えており、彼らが抱える悩み、もといクエストを消化していくことになります。両極端な選択肢を投げかけられるゲームを遊ぶ際は、とりあえず一周目はいい子ちゃんで通して、次の機会で悪の道を走ろうとする私でも、これ選んだらどうなるんだ?と怖いもの見たさを掻き立てる愉快な選択肢が多く、実際そちらを中心に選んでいた。粘土の姿が私の罪悪感を和らげていたのかもしませんね。

理不尽な世界を渡るには武器が必要ということで、主人公が選んだのは身の丈ほどの大きさのハンマー、そして周りは粘土。石壁や大木といった一部のオブジェクトを除き、目についたものやひとは大抵平らに出来ます。肝心のアクション面ですが…これが攻撃を合わせづらくてですね。特にゲーム後半になると、四方に棘をばら撒くサボテンが八方に埋め尽くされる場所が続出して、思い通りに動けない事でうーんと唸ることが何度かあったり。

アイソメトリックビューな本作品では、主人公の周囲以外は闇に包まれており、彼が動くと前方の暗闇が晴れて、鮮やかな粘土群がぽこぽこと顔を見せます。みんな大好きBastionのような、環境が産声を上げるようなアニメーションは備えておりませんが、これがまた楽しげな視界の開け具合なんですよ。また「扉」の影響なのか、虫や洞窟の入り口といったあらゆる粘土が言葉を発しています。聞く姿勢に入っていない時に話しかけられるのは、ゲームと言えど驚くもんだと新鮮な気づき。思いがけない時に予想外のものが喋りかけてくる道中は、冒険心を絶えずくすぐってくれました。

さて、物珍しい粘土の世界も、贅沢な話ですが時間と共に目に馴染み、徐々にあまり宜しくない操作性が浮き彫りになってきます。根はアクションゲームなので、いくら美しい世界や楽しい会話劇が待ち構えていたとしても、それに触れる過程で冒頭で挙げた「ひっかかり」が芽生え始めました。が、何故かこのゲームから目が離せなくてですね、妙な力強さで私の心を今でも掴んで離しません。

この魅力は何から湧き出てるのか、結構な時間考えてみたのですが、これ!といった物を明言できないんですよね。なんでしょうね、本作品のキモともいえる粘土ですが、私長らく触れていなくてですね、一番捏ねていたのはおそらく幼稚園から小学校低学年の間あたり。個人予算やら受験やら気にしなくてもいい、人生でも一、二を争うストレスレスな日々の名残が、無意識下に入り込んで来て癒してくれていたのでしょうか?

まあいいや!この説明できない魅力も含めて、私にとって唯一無二の世界と体験を持つ作品となりました。上半期でもお気に入りの一本(発売は昨年だけどね)。