ねぶそく裏表紙

遊んだゲームの感想です。ネタばれまみれです。週に一度は更新したいかも。

Don't open the doors!

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Steam:Don't open the doors! 

エンドロールまで見届けるものもあれば、私の中の何かにひっかかりを覚えたがために終わらない小休止を挟む作品もある。結構ある。しかし、ごく稀に、そんな違和感を麻痺させる魔力を吐く作品と出会う。本作品のような。

Anton Riotによる「Don't open the door!」は、製作者自身の手で形作られた工作用粘土によって物語られるハンドメイドアクションアドベンチャー。周囲を取り囲む自然、地を這う虫、その虫を潰すと飛び散る体液に至るまで、色とりどりの粘土で組み上げられた世界を歩みます。

ストーリー。ある日、世界に「扉」が現れた。増殖し続ける扉に地上が埋め尽くされる前に、大元の扉を吹き飛ばす「Megabomb」を作動させるため奔走する、といった内容です。突拍子もない幕開けに続けとばかりに、平和に至る道筋には突拍子も常識も持ち合わせていない粘土たちが待ち構えており、彼らが抱える悩み、もといクエストを消化していくことになります。両極端な選択肢を投げかけられるゲームを遊ぶ際は、とりあえず一周目はいい子ちゃんで通して、次の機会で悪の道を走ろうとするも結局再プレイする事は滅多に起きないチキン野郎な私でも、これ選んだらどうなるんだ?と怖いもの見たさを掻き立てる愉快な選択肢が多く、実際そちらを中心に選んでいた。粘土の姿が私の罪悪感を和らげていたのかもしれない。

理不尽な世界を渡るには武器が必要です。彼が選んだのは身の丈ほどの大きさのハンマーで、周りは粘土。石壁や大木といった一部のオブジェクトを除き、目についたものやひとは大抵平らに出来ます。肝心のアクション面ですが…これが攻撃を合わせづらくてですね。特にゲーム後半になると、四方に棘をばら撒くサボテンが八方に埋め尽くされる場所が続出して、思い通りに動けない事でうーんと唸ることが何度かあったり。

アイソメトリックビューな本作品では、主人公の周囲以外は闇に包まれており、彼が動くと前方の暗闇が晴れて、鮮やかな粘土群がぽこぽこと顔を見せる。Bastionのような、環境が産声を上げるようなアニメーションは備えておりませんが、これがまた楽しげな視界の開け具合なんですよ。また「扉」の影響なのか、虫や洞窟の入り口といったあらゆる粘土が言葉を発しています。聞く体制に入っていない時に話しかけられるのはゲームと言えど驚くもんだと新発見。思いがけない時に予想外のものが喋りかけてくる道中は、冒険心を絶えずくすぐってくれました。

物珍しい粘土の世界も、贅沢な話ですが時間と共に目に馴染み、徐々にあまり宜しくない操作性が浮き彫りになってくる。根はアクションゲームなので、いくら美しい世界や楽しい会話劇が待ち構えていたとしても、それに触れるための動作に支障をきたす場面がたびたび訪れ、冒頭で挙げたひっかかりが芽生え始めました。が、何故かこのゲームから目が離せなくてですね、妙な力強さで私の心を掴んで離しませんでした。唯一無二の世界と体験を持つ作品です。上半期でもお気に入りの一本(発売は昨年だけどね)。

Night in the Woods

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Night in the Woods

大学中退を経て、生まれ故郷「Possum Springs」に戻って来たMae Borowski(メイ・ボロウスキ)は二十歳の女の子。久々に目にする田舎町は少し違った表情で出迎えて、馴染みの店は廃墟となり、青春を共にした親友たちは職に就いてそれぞれの生活を送っていました。

町の変化を嗅ぎ取りつつも、これといった目標もなく気の赴くままに過ごすメイの日常に、奇妙な出来事が紛れ込んできます。異変は悪夢や幽霊といった形で姿を現し、メイの生活をどんどんと侵していく。町で何が起きているのか。日常と非日常を行き来するメイの行く末を見守るアドベンチャーゲームです。

舞台となるPossum Springsはかつて豊富な銅を産出する鉱山を抱えた町でしたが、ある事件によって閉山し、経済は衰退の一途を辿る真っ只中。ひいては若者の流出に歯止めが効かない状況に陥っています。そこに住む人々も枯れていく町の空気に当てられながら、金銭問題や人間関係、財政危機といった各々の悩みを抱えて生きている。

この作品に人間は登場しません。青い毛並みとぱっちり赤目が可愛い猫のメイを筆頭に、町の住民は擬人化された動物として描かれています。一種の寓話として、先に挙げた人間社会の諸問題を浮かび上げる意図があるのでしょうか。どちらにせよ、「Night in the Woods」は何百年も語り継がれる寓話と同じように、その物語自体が大変好奇心を掻き立てるものになっています。

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2年ぶりの帰郷。世間と関わることで地元のいまの姿を掴んでいき、時には自身の過去や葛藤を吐き出して、この世界は描写されていきます。したがって、他者との接触を怠ると物語の細部を掴めないまま時が過ぎていくことになるのですが、私を引きこもりから大きく遠ざけた要因としてグラフィックと住民の物語がありました。

幾何学模様とシャープな色合いで構成される世界は細部に至るまで美しく、メイの跳躍力も相まって、どこまでも跳ねて行きたい魅力を発散しています。住民との語らいも、主要キャラクターとなる3名の友人は勿論のこと、街角で佇む人々もそれぞれ独自の哲学と物語を持ち合わせており、ひとつひとつが贅沢なサイドストーリーとも言える聞きごたえ。人と話すのが億劫、なんて気持ちは欠片も湧いてきません。

モラトリアムの渦中にいるメイは、しばしば破滅的な言動を振る舞い場を壊します。目を覆いたくなるような言動も多いのですが、それは過去の私と無意識に重ねて得た気恥ずかしさのせいだったりするかもしれませんね。少なくともメイは頼れる悪友に恵まれているので、道半ばで自暴自棄になって投げ出すなんてことはなく最後までプレイできるでしょう。

気になった点は頻繁に挟むロード画面。あとは、複数のセーブデータを持てるといいな。日本語も出てほしいな。

つい先ほどスタッフロールを見終えた所ですが、一気にプレイした没頭ぶりにもかかわらず「面白い!」「もう一回遊びたい!」といった充足感は不思議と感じません。ですが、何かを残していったようななんとも言えない余韻。受け手によって解釈が異なる体験というよりも、体験そのものが形を変えるような。あぁ、中々考えが纏まりませんが、まあいいや。また明日にでも考えて今日はピザでも食べて寝よう。

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